二十歳そこそこの美男子にナンパされて

由里は髪を揺らして、甘い吐息を漏らした。
開いた両脚が、亮介の腰に押されて宙に浮いている。陰茎が抜き差しされるたびに両脚が揺れ、快感が昂まっていく。
(耐えるの。感じちゃいけないの。不倫の相手に感じちゃダメなの)
由里の豊乳を亮介が容赦なく揉み上げる。膨らみの頂点で屹立した赤い蕾を亮介がしゃぶってきた。惑乱の相を左右に振りながら、由里は昂ぶる快感を必死に耐えた。

松永由里が田中亮介に初めて会ったのは、六か月前のことだった。
十歳になる一人娘、奈海の誕生日プレゼントを買うために、その日、由里はJR札幌駅に併設された大丸デパートに出掛けた。結婚以来、一人で外出することの滅多にない生活を送ってきたためか、早速、由里は道に迷ってしまった。証券会社に勤める夫に訊いてみようかと思ったが、相手にされないことは分かっていたのでやめた。

街は、すっかり変貌していた。
十年一昔とはよく言ったもので、世の中の移り変わりの激しさに由里は改めて驚いた。十五、六年前、まだOLだった頃、足繁く通った喫茶店の入ったビルも、建て替えられて跡形も無くなっていた。過ぎゆく時の残酷さに寂寥感を覚えたが、歩道を往来する人の顔には昔と同じ忙しげな表情が張りついていた。

「こんにちは!今日はお一人ですかぁ~?」
突然、声を掛けられた。振り向くと、きっちりとした紺ストライプのスーツに身を包んだ、背の高い男が微笑んでいた。歯並びのいい、真っ白な歯が印象的な青年だった。細面で筋の通った鼻も、少し下がった目尻も、薄くめくれ上がった唇も、ちょっと尖った顎も美男子のそれだった。
「ええ・・」
緊張して、口籠ってしまった。異性に声を掛けられることなど、結婚以来初めてだった。
「今日は、どちらへ?」
「ちょっと・・娘の・・」
「怪しい者じゃないですよ。ただ、綺麗な方だなぁ~と思って」
「・・」
「最近、勉強したんですけど、千載一遇のチャンスって言うじゃないですか」
「難しい熟語、知ってらっしゃるのねぇ」
「ええ、俺、これでも勉強家ですから」
「自分で言うものじゃないわ、そんなこと」
いつも間にか、彼のペースに嵌っていた。
「俺、田中亮介って言います。二十二歳です。あなたは?」
「私?由里。歳は、ご想像にお任せするわ」
「う~ん、三十二歳くらいかなぁ~。分からないや、女性の年齢って」
「それじゃ、三十二歳にしておいて、うふふ・・」
亮介とは、最初から不思議と馬が合った。仕事で多忙を極める夫とは、殆ど会話がなく、もう何年もセックスレスの生活が続いていた。
「もし宜しかったら、これから一緒に食事でもしませんか?」
「これから?娘の誕生日プレゼントを買おうと思っていたのよ」
「じゃ、俺も付き合いますよ」
「仕事は大丈夫なの?」
「営業だから、融通が効くんですよ」
「あら、まぁ・・仕方がないわね」
「決まりですね」
それから一緒に買い物をし、ちょっと洒落たイタリアンレストランで食事をし、連絡先を交換して別れた。

その後、由里の生活にはハリが出てきた。
毎日届く亮介からのメールに、心が躍ったからだろう。奈海にも、そのことを指摘された。仕事に忙しい夫は全く無関心のままだったけれど、由里の気持ちは晴れやかだった。これが、不倫の始まりなどとは思いもしなかった。

真夏の道の反射が眩しかった。
頭の芯に突き刺さってくるような陽射しだった。
しかし、由里の気持ちは昂ぶっていた。
あの出会い以来、初めての亮介とのデートだったからだ。久し振りに黒のサングラスを掛け、花柄のノースリーブブラウスに白のジーンズを穿いてみた。無意識に、亮介の若さに合わせようとしていたのかもしれない。

不倫に対する意識が全く無かったといえば嘘になる。でも、亮介に会いたい気持ちが優っていた。夫には、同窓会だと嘘をついた。奈海は、少し訝しがっていた。
でもそんなことは、今の由里には関係なかった。ただ、亮介に会いたかった。

約束の時間に札幌グランドホテルのロビーに着くと、亮介が遠くから片手を上げて近づいて来た。