瓢箪から駒が出たぁ!?

ほろほろと零れるような初春の陽が、北の都・札幌を包んでいた。

そんな陽気に誘われ、聡美は久し振りに街中に出てみた。頬を撫でる風にも、確かな春の到来を感じる。行き過ぎる人の顔には、ようやく長い冬から解放された安堵の表情が溢れていた。
(厚手のコートじゃなくて、薄手のステンカラーコートにして正解だった)
一人ほくそ笑みながら、大通り公園を横切り、札幌駅を目指して地上の歩道を歩いた。一昨年、完成した地下街『ち・か・ほ』を歩く方法もあったが、麗らかな春の陽気を体一杯に浴びていたかったから、少々の寒さなど気にせず歩いた。

約十五分で、札幌駅に隣接したJRタワーホテルN札幌に到着した。
『カフェ S』のアフターランチで、朗らかな午後のひとときをゆっくり楽しみたいと思ったからだ。
南側が一面ガラス張りになったカフェの窓際のテーブル席で、色とりどりのスィーツを賞味し始めた時だった。

遠くから誰かの視線を感じた。
最初は無視していたが、それでも尚、私をじっと見つめている。食べることに集中しようと思ったが、視線が気になってスイーツが喉を通らなくなった。
(知り合い?どこかで会った人?)
そんなことを考えていると、遠くの人影がこちらに向かって歩いてきた。どんどん近づいてくる。
目を反らし、心の中で念じた。
(どうしよう。誰かたすけてぇ~)

その時だった。
「お一人ですか?」
渋い声だった。その声でふと我に返った。柔らかな陽光が眩しかった。
「・・」
「あなたが余りにも綺麗だから、つい・・」
「・・」
「もしお邪魔じゃなかったら、こちらのテーブルに移ってきて宜しいですか?」
「・・」
どぎまぎしている私をよそに、自分のトレイを両手で持って、男は近寄ってきた。そして、まるで昔からの知り合いであるかのように、テーブルを挟んで私の真向かいの席に腰を下ろした。
「今日は、本当に良い天気ですね」
(図々しいたっら、ありゃしないわ、この男)
白髪の目立つ、顎鬚を蓄えた五十代後半の男は、仕立てのいい焦げ茶のツイードジャケットに同系色のズボンを穿いていた。歌舞伎役者のような容貌が上品な印象を与え、物腰の柔らかさが何かに長けた者の持つ自信と落ち着きを醸し出していた。
「今日は、どうしてここへ?」
(答える必要もないじゃない、そんなこと)
「こんな日は、ふとどこかへ出掛けたくなるものですよね」
人の気持ちを無視して、男は独り言のように喋り続けた。
「一昨年、妻が亡くなりましてね。ここ、妻が好きでよく来ていたんですよ」
「・・」
「それで、今日も何となく天国にいる妻に会いたくなって、来てしまったというわけです」
(そうだったんだぁ~)
「それで、あそこに座っていたら、あなたが一人で入って来られて。びっくりしましたよ。妻によく似ていたから」
(またまたぁ~。詐欺師かぁ、コイツは・・)
「とにかく、ほんの少しだけ付き合って下さい」

それから、小一時間ほど男は喋り続けた。
大学時代に知り合った妻とは学生結婚だったこと、二人の娘に恵まれたこと、長年連れ添った妻は乳癌で亡くなったこと、今は小さなデザイナー事務所を経営していることなど、聞いてもいないのにペラペラと喋ってくれた。
「じゃ、あなたの事務所を見せて下さるかしら?」
まだ男のことを信用できないでいた私は、鎌をかけてみた。
「ええ、いいですよ」
(え、ホントだったの、事務所を経営してるって・・)
「じゃ、早速、向かいましょうか?」
思わぬ展開に言葉も出ない私の先に立って、大柄な男は店を出て行った。私も会計を済ませ、小走りで彼の後を追った。

黒のセルシオが、綺麗な雑居ビルの前の車道に停まった。
「さぁ、着きましたよ。このビルなんですよ、うちの事務所」
見上げると、八階建てのかなり大きな建物だった。
「さぁ、中でコーヒーでも飲みましょう」

札幌の街に夕闇が迫ってきていた。
「今夜のご予定は?」
「別にありませんけれど」
「じゃ、夕飯、付き合って貰えませんか?」
「いいですけれど・・」

円山にある高級割烹料亭に着く頃には、街はとっぷりと暮れていた。
日頃は食べれない高級な料理の数々に舌鼓を打った後、彼の高級マンションへ誘われるままに付いて行った。

数時間後、ベッドルームで私は一糸纏わぬ裸になっていた。

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